粕取り焼酎の飲み方とは?粕取り焼酎の歴史や製造方法、おすすめの楽しみ方をご紹介
「粕取り焼酎」というお酒をご存じでしょうか。
「粕取り焼酎」は、簡単に言うと焼酎と日本酒、2つの特徴を合わせ持った珍しい焼酎です。
今回の記事では、「飲んだことのないお酒を飲んでみたい」「ちょっと珍しいお酒を飲みたい!」という方にオススメの粕取り焼酎について、大分県日田市の酒蔵クンチョウ酒造がご説明します。
目次
粕取り焼酎とは?
日本酒を造るときに出る「酒粕」、そして米作りの際に出てくる「籾殻」(成長した稲の一番外側にある固い皮のこと)。
この2つを組み合わせてできたものが、古くから伝わる「粕取り焼酎」です。
酒粕は皆さんご存知の通り、醪(もろみ)から日本酒を絞り取ったあとに残る白色の固形物です。日本酒の副産物であるこの酒粕は、肥料としても活用されるほどにお米や酵母の栄養分がたっぷり含まれています。
この熟成させた酒粕と、米作りのときに出てきた籾殻と練り合わせ、蒸留させたものが「粕取り焼酎」です。(「酒粕を原料とした焼酎」なので、酒粕焼酎とも呼ばれています)
焼酎に分類されますが、酒粕を原料としているため酒蔵が製造していることが多く、日本酒の魅力を兼ね備えた焼酎と言えます。
酒蔵豆知識:
搾り粕でお酒を造る文化は海外にもあります。ワインを造る時に出たぶどうの絞り粕を再発酵させて造ったのが、イタリアの「グラッパ」やフランスの「マール」です。
高級ワインの酒粕蒸留酒にはプレミアがつくこともあります。
粕取り焼酎の歴史
粕取り焼酎の発祥は、福岡県や佐賀県などの北部九州と言われています。
古くから稲作地域では、田植えが終わる5~6月に「早苗饗祭(さなぶりまつり)」が開催されていました。そこでは、粕取り焼酎が豊作を祈願する神事の御神酒として供えられ、田植えに協力してくれた人たちをねぎらう振る舞い酒に使われました。
粕取り焼酎は地域の伝統であり、米作りを担う農家にとっては特別なお酒だったのです。
米を原料に酒蔵が日本酒を造り、そこでできた酒粕と秋の収穫期に出た籾殻を使って粕取り焼酎を造る。
粕取り焼酎を蒸留したあとの粕は、再び農家が引き取り肥料にする。
古くから愛されてきた粕取り焼酎は、まさに先人の知恵であり、究極のサステナビリティなのですね。
粕取り焼酎の作り方
粕取り焼酎は、昔ながらの製法で造られる「正調粕取り焼酎」と、現代版にアレンジして造られるようになった「吟醸粕取り焼酎」の2種類に大きく分類されます。
正調粕取り焼酎
酒粕と籾殻を混ぜて造る、昔ながらの粕取り焼酎です。
古くから伝わる伝統的な製法であるせいろ式の蒸留器を使用します。酒粕に籾殻を混ぜることで、発酵させる過程での通気性がよくなります。
非常に手間と時間がかかる製法のため、この製法で粕取り焼酎を造っている酒蔵はどんどん少なくなっており、全国でも10ヶ所ほど。店頭で見かけることもほとんどない、希少価値の高いお酒です。
クンチョウ酒造の粕取り焼酎「三隈」は、この正調粕取り焼酎の製法で造られています。
吟醸粕取り焼酎
吟醸、大吟醸の日本酒を造るときにできた酒粕に再度、麹と酵母を入れて仕込み、蒸留する製法です。
籾殻を入れないので、昔ながらの粕取り焼酎とは少し異なりますすが、「現代版粕取り焼酎」として受け入れられています。
クセの強さからツウ好みと認識されていた粕取り焼酎ですが、吟醸粕取り焼酎の登場で、愛飲者の幅が広がりつつあります。
粕取り焼酎はどんな味わい?
粕取り焼酎は焼酎でありながら、酒粕に含まれるお米の味わいを楽しめるお酒です。
酒粕には、それぞれの酒蔵の日本酒造りの個性が表れます。日本酒好きな方は酒粕由来の香りや味わいにも注目してみましょう。
さらに正調粕取り焼酎には、籾殻独特の芳ばしさが加わります。口に含むとパンチのある香りが鼻に抜けて、非常に個性的な味わいです。飲んだあとには目の前に田園風景が広がっていくような、ロマンを感じる味わい深さです。
正調粕取り焼酎の籾殻由来の独特な風味は、好みが分かれるところではあります。ウイスキーの樽由来の余韻や、麦焼酎の麦の芳ばしさに通じるところがあるかもしれません。王道の粕取り焼酎とも言えるものなので、お酒好きな方や、新しいお酒にチャレンジしたい方にはオススメです。
粕取り焼酎本来のクセのある香りを抑え、米の香りを高めたものが吟醸粕取り焼酎です。
クセがなく、フルーティーな吟醸香が感じられるのが特徴。万人受けしやすいすっきりとした味わい。初心者にオススメです。
粕取り焼酎のオススメの飲み方
粕取り焼酎はどのように飲むのがオススメなのでしょうか。アレンジ法についてもご紹介します。
ロック
粕取り焼酎はロックで飲むのがオススメです。
水道水で作った氷はえぐみを感じることがあるので、できればミネラルウォーターで作った氷を使いましょう。また、大きめの氷を使ったほうがゆっくり溶け、時間経過で少しずつ変化する味わいが楽しめます。
一般的に粕取り焼酎は度数が高いので、飲む速度や量に注意しましょう。
梅酒のベースに
梅酒はホワイトリカーと呼ばれる甲類焼酎を使って造る場合が多いですが、粕取り焼酎をベースにするとひと味違った梅酒が出来上がります。
ホワイトリカーで作った梅酒はクセがなくて飲みやすく、飽きのこない味わいです。梅の香りが際立っています。
一方、粕取り焼酎で作った梅酒は、奥行きがありガツンとした飲みごたえのあるものに仕上がります。梅と酒粕の混じり合った香りも格別です。
ホワイトリカーに比べると粕取り焼酎は高価ですが、一度飲むと中毒性があるらしく、梅酒のベースとして贅沢な使い方をされる方も多くいらっしゃいます。
角砂糖を入れて
粕取り焼酎にはクセがあるので、角砂糖を入れて甘くして飲むのも人気の飲み方です。甘味料は、氷砂糖やはちみつでも構いません。
日本では、中国料理店で紹興酒を注文すると、氷砂糖が一緒に出てくることがありますよね。
甘くするとお酒がまろやかになって飲みやすくなるので、アレンジのひとつとして試してみてはいかがでしょうか。
粕取り焼酎と合うおつまみ
ナッツ類
食後につまむのに罪悪感がなく、軽い食感が魅力のナッツ類。
ガツンとした味わいの正調粕取り焼酎には、コクのあるクルミやスモーキーな燻製ナッツがオススメ。さまざまな味が楽しめるミックスナッツを購入して、自分好みのマリアージュを探すのも楽しそうですね。
チョコレート
甘さのあるチョコレートは、お酒をまろやかに感じさせてくれる効果が期待できます。
正調粕取り焼酎とチョコレートは香ばしさが共通するので、お互いの風味を引き立ててくれるでしょう。雑味の少ない吟醸粕取り焼酎も、チョコレートの甘みを邪魔せず、美味しくいただけます。
チーズ
日本酒と同じ発酵食品であるチーズは、酒粕から造られる粕取り焼酎とよく合います。
クセが強い正調粕取り焼酎には、同じく味や香りにクセがあるブルーチーズやゴルゴンゾーラがピッタリ。
お酒とおつまみの相性を考える際には、風味が同じタイプを選ぶのが王道です。
クンチョウ酒造の粕取り焼酎
SDGsに向けて世界が動き出し、「サステナビリティ」という言葉をよく聞くようになる前から、酒蔵では自然の恵みに感謝し、「自然を使い、自然に還す」という循環を生み出していました。
米を原料に酒蔵が日本酒を造る。
酒造りできた酒粕と秋の収穫期に出た籾殻を使って粕取り焼酎を造る。
粕取り焼酎を蒸留したあとの粕は、再び農家が引き取り肥料にする。
そしてまた、新しい米作りが始まる。
このように酒蔵は古くからサーキュラーエコノミーを実践しています。
クンチョウ酒造の酒造りの根底には、昔ながらの製法・伝統を次世代へ残していきたいという想いがあります。
今では取り組む酒蔵が少なくなった粕取り焼酎を造り続けるのも、その一環です。
酒粕は粕取り焼酎のほかにも、甘酒や粕漬けに使われています。古来から酒蔵は自然の恵みを何ひとつ無駄にすることなく、地域に密着した生業として歩んできたのです。
先人の知恵と伝統、その想いをつないでいくことが私たちの使命であると感じています。
ぜひ皆さんも、粕取り焼酎の個性的な味わいをお楽しみください。